吉原手引草 松井今朝子・著 幻冬舎kobo
今で言うなら「色里・吉原の正しい歩き方」とでも喩えたら良いでしょうか。
物語は、今を時めく花魁の神隠しにあったかのような鮮やかな失踪事件を軸に、事件に関わった吉原に生きる様々な人々のインタビュー記事という形式で語られていきます。
題に「手引草」とあるように、事件の真相を引き出そうとするインタビュアー(自称・草子作者)の意図をよそに、吉原での野暮にならない遊び方や作法、昔話や噂話などが、登場人物それぞれの視点で語られ、これ一冊あれば、吉原で困らない、立派なガイドブックになっています。
そして、最後には「なるほどっ!」と思わせる事件の真相が紡ぎ出されていきます。
「前世占い」なんてものが流行った時に、雑誌やら携帯サイトやら、いくつかやってみたことがあるのですが、
どれで占っても、「花魁」と答えが出てくる私。
でも、そう言われて、「そうだと思った」と妙に納得している自分もいたりして、まんざら嫌ではないのです。
歌舞伎が好きなのもそのせい?
きものが好きなのもそのせい?
「花魁」「吉原」「芸者」「太夫」「女郎」・・・物心ついた時から、こういう種類の言葉に魅かれるのもそのせい?
幼いころから時々フラッシュバックする、見たことないはずの格子越しの風景・・・。
誰からも愛され、本意を遂げて忽然と表舞台から姿を消した「葛城太夫」に、ついつい自分を重ねてしまう私でした。
第137回直木賞受賞作です。