風立ちぬ-シネマ
この映画を観た日、
ヴェネチア国際映画祭で、宮崎駿監督が長編アニメから引退するという発表がありました。
6日の記者会見は、興味深く拝見しました。
公開前から、鈴木プロデューサーが「宮崎の遺言だ」という発言をされたりしていて、
そして、作品を観て、引退のニュースを聞いて、とても納得した者の1人となりました。
「風立ちぬ」はとても素直な、まっすぐな少年のような作品だったと思います。
私は監督自身を深く投影していると感じました。
ヒコーキが大好きな少年の夢と青春と恋と永遠の別れです。
ヒコーキは私も大好き。
憧れて憧れて、ものづくりにはまっていく様は、私の青春とも重なります。
あの、新しい問題にぶつかったときのワクワク感。
若い頃の不敵な万能感を懐かしく思い出しました。
そして、必ず訪れる、この世から消えてしまいたいと思わせるほどの挫折感。
そして、そこから救ってくれるのは、自分の女神です。
今回の作品は純粋なラブストーリーでもありました。
宮崎作品にラブシーンが出てくるなんて想像もしていなかったので、
驚き、そして感激し、幸せな気持ちになりました。
堀辰夫の「風立ちぬ」の世界観を壊さずに、宮崎ワールドに再現された、
それはそれは美しいラブストーリーでした。
この映画はリピーターが多いと聞きました。
分かる気がします。
メッセージを美しい物語にきれいにくるむことがお上手な宮崎監督の「思い」が強く、そして多くて、
1回きりでは受け止めきれないのだと思います。
上映を終わって、私も、もう一度、最初からゆっくり観たいと思いました。
少し反芻しないと、きちんと受け止められそうにないと思いました。
この感じ、「風の谷のナウシカ」のときにも感じたように記憶しています。
引退のニュースはとても残念ですが、
この作品を拝見し、
ご自身は、とても満足されているのかもしれない・・・
と、勝手にそんなことを思っています。