小さいおうち 中島京子・著 文藝春秋kobo
本の装丁にこれほど魅かれたのは、久しぶりです。
いとう瞳さんの装画です。
出逢ったのは映画館。
山田洋二監督が映画化されて来春公開される映画のチラシでした。
映画のチラシだったのですが、
直感的に本の装丁ではないかと思い、
これは原作を読まなければと、妙な義務感まで感じて帰ってきました。
幸い、電子化されていて早速購入。とても素敵な装丁で、
そのまま、映画のチラシになったことも納得。
第143回直木賞受賞作です。
戦前から終戦まで、住込みの女中をしていたタキちゃんと時子奥さまのお話です。
年老いたタキちゃんが当時のことを書き溜めたノートを甥に見せる形で、昔語りが進みます。
戦時中の庶民からみた日本の様子がとても新鮮で、興味深かったです。
ノートを読む甥は、「戦時中にこんなにのんきに過ごしていたなんて信じられない」と言いますが、
かえってリアリティーがあって、庶民はこんなものだったのかもしれない、
渦中にいるときは案外そんなものに違いないと感じ、タキちゃんの視線にどっぷり浸かって、
私も、一緒にその時代を過ごしました。
そしてタキちゃんがずっと抱えていた秘密と後悔。
もちろん最後まで読みましたが、私には、ホンとの答え、真実は何であったのかは分かりません。
むしろ、あまりはっきりさせたいとは思いませんでした。
そして、秘密のままにしておきたい読者にはそのままにしておけるような、
そんな作者の含みを感じるのですが・・・、
考え過ぎかな(笑)