NEWシネマ歌舞伎「コクーン歌舞伎 三人吉三(さんにんきちさ)」
退廃した空気が漂う幕末のある時を
重なり合うように生きた三人のチンピラのお話です。
監督は串田和美
自ら演出した舞台のシアトリカルムービーです。
これまでのシネマ歌舞伎も舞台を観ているような錯覚をするほど
臨場感あふれる演出、カット割りがされてきましたが、
今回はさらにNEWの冠がついたように、
今までにはなかったカメラアングルで舞台を撮影しています。
障子の空いた穴からであったり、
観客の観ることができない舞台奥からであったり、
ハッとするような映像が重なっていきます。
それでも、
舞台を観ているように錯覚させてくれるお約束は守られ、
場面は次々と展開していきます。
原作は河竹黙阿弥。
七五調のセリフが流麗で、多くの名セリフが残されていますが、
庚申塚のお嬢吉三のセリフ「月もおぼろに白魚の・・・」が七五調に聞こえず、
「えっ」と目が点になってしまいました。
あとで映画のパンフを読んでいたら、
そういう串田監督の演出だったとのこと。
ふ~ん、なるほど。
意図はよく分からないけれど、確かに新鮮な気がしたし・・・
セリフに飲み込まれてなくて、
かえって聞きやすくて分かりやすかったし・・・
こういうのもありなんだ、と。
演劇実験的演出のコクーン歌舞伎が、
さらに実験的編集なNEWシネマになって、
グイグイ吉三の世界に引き込んでくれるので、
最後はこの三人のチンピラの生き様が
あまりに哀れで泣いてしまいました。
舞台、観たかったなぁ(笑)。