旅情 <午前十時の映画祭7>
若い頃に一度観て、
切ない思いと素敵なベネチアの風景が心に残って、
もう一度観たいと思っていた作品でした。
私が歳を取ったのか、社会が変わったのか、
初めて観たときの印象と大きく変わりました。
ベネチアの映像とストーリーを追うだけでも十分な映画でしたが、
年を経て、琴線に触れるところが微妙に変わり、私にとって、さらに奥深い映画になりました。
いい映画は観る者の変化も越えて良いものなんだなぁと。
若いときは、終わらせてしまった実らない恋に不満だったけれど、
今なら、十分分かります。
何故か、私の中の映画の記憶がモノクロで、
時々、その逆もあったりするのですが、
赤いベネチアグラスもモノクロで覚えていて、
青い空と赤いグラスを観たとき、「そうよねぇ、カラーじゃなくちゃね」と・・・。
でも、私としては、モノクロで思い出した方がしっくりきています。
このロマンスでこの先また何年間かがんばれてしまう。
人生のご褒美は時にほろ苦く、
甘いばかりでは、こころに響かないのです。